おとこのこ、おんなのこ。から、キョン
「……さて、掃除の目処がついたところで一つお伺いしたいことがあります」
「なんだ」
確かに後は机と椅子を元の場所に戻して、手洗い場で冷たい水に手と雑巾をさらすぐらいの作業しか残っていない。
クローゼットカバーは来週ハルヒが持って帰るだろうし、まさか習字道具を日曜に持ってこいとは言われまい。
鷹揚に返事をして箒を片付ける俺の背中を追ってくる視線がレーザービームのごときだ。言っておくがお前がウインクをするたびイツキビーム(仮)が出てくるようなことがあれば俺は生涯お前と視線を交わすことはないだろうからよく覚えておくように。
「僕にそのような特殊能力が追加されることはまずないでしょうね」
「ハルヒの興味が美少女マスコットからイケメン改造計画に向かないとも限らないだろう」
「では、せいぜいそうならないように努力しますよ」
何を努力するんだ、と俺に言わせないうちに古泉は前髪を押さえてふっと微笑んだ。
その、一見意味深のようでいてその実意味などない仕草をお前はもうちょっと控えた方がいい。やむを得ない事情によって俺の心臓というか四肢というか、が若干の緊張を伝えてきて俺に良くない。
「失礼、話が逸れましたね」
むしろわざとやっているのではないかと邪推しました、とシャーペンをお忘れでしたよ、と言うのと同じ微笑み付きで言うのもどうかと思うね。
大体失礼だ、俺は話をさり気なく逸らそうなどという意図はこれっぽっちも持っちゃいない。俺とお前の二人なのだから、お前さえ強固な意志を持っていれば話をストレートかつ一本気に終わらせることは容易なはずだぜ。
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