薔薇、流星の下に咲く冒頭部分より。



 本日の集合時間は、午後九時だった。夜である。なんかもう完膚無きまでに夜なのだが、高校生ともなるとこのぐらいの時間に出歩くくらいのことは平気でやってのける。十一時以降出歩いていると補導対象になるんだったか? 詳しい時間はあいにく覚えていない。
 今回のSOS団課外活動は不思議探しツアーではない。しかも驚いたことに、提唱者がハルヒですらない。もうこれはいっそ天変地異と言ってしまってもいいかとは思うが、それは言い過ぎだろうか。それはともかく、今回の発案者は麗しき部室のメイドさん、エンジェルにしてゴッデス、朝比奈さんだった。
 待ち合わせ場所、いつもと違う駅前に行くと、お約束というかなんといおうか俺以外の全員が勢揃いしていた。中央に陣取ったハルヒは一言、
「遅いっ!」
 ああ解ってますとも、もうなんかそれを言うことが規定事項になってないか。
「か弱い女の子を夜道に待たせるなんてなってないわ!」  とりあえず、真にか弱き乙女である朝比奈さんはともかく、ハルヒにか弱いという修飾語をつけるのは非常にためらわれる。長門は、まあ、外見だけ見ればそう見えるが、中身はまるっきり違うものと言わざるを得まい。
「まあ、変な輩が来てもあたしがいれば安心だけどねっ」
 そう言って両隣の朝比奈さんと長門を抱き込んだ。最初から自分を『か弱い女の子』に入れていなかったようだ。それより存在を全く忘れられてるっぽい男子団員について意見を窺いたいね。頼りにならないと言いたいのか、マジに忘れてたのか?
「ひどいですね」
 両手を軽く広げて肩をすくめてみせる、という仕草がこれほど似合う男というものを俺は他に知らない。ともかく夜の、一種別物の雰囲気の中で顔を合わせた古泉も、普段と全く変わらないハンサムっぷりを見せつけている。
ふと俺は、夜だろうと昼だろうと僕の魅力は変わりませんよ、などとほざいている古泉の姿を脳内で想像してみた。三秒で殴りたくなった。実に意味のない想像をしたものだ。
「涼宮さんが僕を忘れるはずがないじゃないですか」

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